昔、西宮ケーソンのスズキを食べてから考えたこと

初めて食べたスズキ

かなり前の話になるが、関西で釣りを再開した頃 先日閉鎖が決定した西宮ケーソンでエビ撒き釣りをしてスズキを釣ったことがある。

いや正直に書こう

私は釣れなかったが、いっぱい釣った隣のおじさんから1匹分けてもらった。体長40cmくらい。やや黒ずんだ魚体に不安を覚えながらも家に持って帰り、当時は魚のさばき方などわからなかったため、料理上手の奥さんに調理をしてもらうことになった。三枚に下ろしている時から漂うただならぬ匂いにやや後退りしながらも流石に刺身では食べる気にはならなかったので塩焼きにしたり、オリーブオイルで焼いてみたり、カレー粉でソテーしてみたりしたが、いずれもだめ。

スズキという魚が本来もつ魚臭に加えて、ケミカル臭というかなんというか今まで経験したことがない匂いに食べ進めることができなかった。

以来、奥さんは「スズキ」という魚が全く食べられなくなり、釣ってきても決して料理もしないし、食べたりはしないと宣言。それは今に続いている。私自身も以降スズキ釣りはしないし、釣場も淡路島や泉南・和歌山など比較的水質がいい釣場に行くことも多く、釣ってきた魚が生臭くて食べられないといった経験はしていない。

もちろん西宮ケーソンのような湾奥エリアの魚でも、アジ、サバ、イワシタチウオ(最近はほとんど釣れていないが)のような回遊魚であれば、さほど水質の影響は受けずに問題なく食べられると思うが、そこに定着している魚(いわゆる居付き)スズキやチヌ(黒鯛)のような魚はそのエリアの水質の影響を受け、いわゆる「臭い魚」になり釣れてもそのままリリースというパターンが多いと思われる。

ではその湾奥エリア、ひいては大阪湾全体の水質はどうなっているのだろう

大阪湾奥エリアの水質

大阪湾環境データベース HPより引用(http://kouwan.pa.kkr.mlit.go.jp/kankyo-db/first/)

まずこの表を見てみる。

大阪湾エリアの夏季表層CODの分布を表現したものだ

CODとはChemicalOxygenDemand(化学的酸素要求量)の略であり,海水や河川の有機汚濁物質等による汚れの度合いを示す数値で,水中の有機物等汚染源となる物質を通常,過マンガン酸カリウム等の酸化剤で酸化するときに消費される酸素量を mg/Lで表したものである数値が高いほど、水中の汚染物質の量も多い

まあ専門的用語の掲載はここまでとして、つまり赤い色が濃いところほど、(すごく雑な言い方をすれば)「汚れている海水」ということになる。「大阪湾環境データベース」によれば「散策や展望に適した表層CODを5mg/L以下とした」としたとある。グラフ中のピンク色の部分、これは私の経験上、釣り上げた魚を持って帰って、問題なく食べれるエリアとも重なる。泉南エリアでいえば、岸和田以南、神明エリアでいえば須磨以西 淡路島全域に当たる。このエリアでは様々な魚を釣ったが全て美味しく食べられた。

ただ一方で近年大阪湾では様々な規制により各所の努力により劇的に水質が改善されている。

このグラフを見てもらいたい。

大阪湾データベースHPより引用

昭和54年に比べ 大阪湾のCOD発生負荷量は平成31年(2019年)約三分の1となっている。このことにより水質が改善し、海水の透明度が上がったわけだが、別の問題も浮上してきた。

魚が獲れなくなってきた」のだ。

水質が良くなって魚が獲れなくなる?

大阪湾北部の汚れた水は問題だが、そこには食物連鎖の最下層となる植物プランクトンの餌となる窒素やリンも含まれている。餌が少なくなると植物プランクトンを捕食する動物プランクトン、それを食べる小魚それを食べる大型魚が少なくなってきたのだ。特に大阪湾南部、私がよく釣りに行く泉南、岬町付近でその傾向が顕著だと言われている。

この状況を大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科 教授(当時)の大塚耕司先生は埋め立てが進んだこと大阪湾では海岸線の変化により潮流が阻害され本来の循環ができておらず

海中内の栄養が湾北部に偏りすぎていると指摘されている。「大阪湾の南はきれいすぎ・北はきたなすぎ」という訳である。

https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/74.html より引用

現在この解決を目指して様々な対策がうたれている。この取り組みは大阪湾内の泥をかき混ぜプランクトンを活性化させ、魚の方餌を増やそうとする取り組みだ。

https://www.youtube.com/watch?v=yt9s1jgmjlE (TV大阪 YouTubeより)

これからもこういう取り組みは継続していただきたいし、釣り人として私も何らかのお手伝いができればと考えている。

再び西宮ケーソンでの話

おそらく西宮ケーソン周辺の水質も私がスズキをもらった当時から比較しても改善されているはずだ。

一昨年の今頃、西宮ケーソン近くの石畳で釣りをしていた時、近くの釣り人が同じくエビ撒き釣りでチヌを釣り上げた。おそらく釣ってもリリースするんだろうなあと思って見ていると、その釣り人は釣り上げたチヌの口元に鼻を持っていって匂いを嗅ぎ始めた。そしておそらく大丈夫と判断したのだろう、持ち帰るべくそのチヌをナイフで締め出した。なるほどその人は経験値で食べられる魚とそうでない魚を魚の内部からの匂いで判断していたのだ。こういう方法があるのだなあと、感心した。

もちろん釣り上げた魚が臭くで食べられないというのは、完全に人間サイドのエゴであり魚にとっては全く関係ないことは言うまでもない。チヌやスズキは大昔から大阪湾に住み続け、これからも住み続けていくだろう。私たちにできることは、彼らの生育環境をこれ以上悪化させず、かつ たまにその一部を釣って食べて楽しませてもらうことなのだ。

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